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いびき・睡眠時無呼吸症候群

はじめに

睡眠時無呼吸症候群とは睡眠中に何回も呼吸が止まり十分な睡眠がとることができない病気です。
数年前の新幹線の運転手の居眠り事件後広く社会的に認知されるようになりましたが、なにぶん睡眠中の事ですのでご自身では気づかずにベッドパートナーに指摘されて初めて病院を受診される方も少なくありません。
一晩の睡眠中に数回程度の無呼吸なら問題はありませんが、無呼吸や低呼吸(呼吸が弱く胸や腹の運動が50%以上低下する状態)が1時間当たり10回以上認められる場合を睡眠時無呼吸症候群と呼びます。また、いびきは鼻から喉までの上気道のどこかで狭窄部位が出現するために呼吸に同調して起こる雑音で、睡眠時無呼吸症候群にいびきは必発であり、大きな、しかも毎晩いびきをかくときは睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いといわれています。

症状と合併症

深い眠りが得られないために日中に強い眠気に襲われたり、全身の倦怠感や集中力の低下、朝起きたときの頭痛など様々な症状が現れ、居眠り運転や仕事のミスの原因ともなります。
ある報告ではこの疾患では交通事故を起こす頻度が一般の3.7倍になるともいわれています。さらに重症になると睡眠時の低酸素血症のため生活習慣病の発生率が増加し正常人と比較すると睡眠時無呼吸症候群では高血圧症は約2倍、冠動脈疾患は約2〜3倍、脳血管疾患は3〜5倍に増加することが指摘されています。また、小児では集中力や学習能力の低下の他、睡眠時に分泌される成長ホルモンの低下により発育障害の原因となります。

いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因には次に述べるようないろいろなものがあり、その診断にはファイバーやCTを用いる耳鼻科的検査が有用です。

ただし、いびきの中には健康上は問題のない程度のいびきも多く、その場合は原因や治療法がわからないこともあります。

原因

鼻腔

鼻腔

アレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲症、肥厚性鼻炎などで高度の鼻閉があると鼻での呼吸が困難となり、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となります。
一方では手術で鼻閉が改善されるといびきや無呼吸もある程度改善することが知られており、具体的には鼻閉を有するいびきでは鼻閉を改善させると約30〜50%の確率でいびきも改善するとの報告もあります。

また、後で述べますが重症の睡眠時無呼吸症候群の治療に用いるCPAP療法では睡眠時に鼻のマスクから持続的に空気を送り込むために高度の鼻閉では装用困難となり、持続的な装着のためには鼻閉を改善する必要があります。

口蓋扁桃・アデノイド

口蓋扁桃・アデノイド

口蓋扁桃は口腔の奥にある扁桃組織でアデノイドは鼻の奥にある扁桃組織で別名咽頭扁桃とも呼びます。これらが大きいと上気道の閉塞を来たし睡眠時無呼吸症候群の原因となります(図3)。
特に小児の無呼吸ではほとんどがこの口蓋扁桃やアデノイドの肥大が原因であると言われています。

軟口蓋・口蓋垂・舌根部

軟口蓋・口蓋垂・舌根部

軟口蓋は扁桃腺の後方、左右に広がる粘膜の襞であり、その中央部の突出が口蓋垂です。
後口蓋弓や口蓋垂が長いために、その部が狭窄、あるいは睡眠時の体位によっては閉塞します。(図4)また、舌根部が落ち込むことも眠時無呼吸症候群の原因となります。(図5)

検査

視診・画像診断・
鼻腔通気度検査

視診・画像診断・鼻腔通気度検査

いびき、無呼吸症候群のうち、どこかの部位が狭いことが原因となっている場合は狭窄部位の診断が重要です。狭窄部位が不明のまま後述するCPAP療法を画一的に行っても鼻詰まりなどで治療が続けられない場合も少なくありません。

一般的な内科と異なり、当院では鼻腔、咽頭、喉頭など狭窄の原因となる部位を視診にて、視診が困難な部位は内視鏡などにて異常の部位を確認します。

さらに必要な場合にはレントゲンやCTなどにて精査します。また、鼻閉が強い場合には鼻腔通気度検査にて客観的な通気度の検査をします。

終夜睡眠ポリグラフィー検査(アプノモニター)

終夜睡眠ポリグラフィー検査(アプノモニター)

睡眠中の無呼吸の程度、血液中の酸素濃度、いびきの頻度や大きさなどを調べる検査で、ご自宅で簡単に行うことができ、テープでセンサーを貼り付けて頂くだけです。(図7)当院では予約制でアプノモニターを貸し出し、無呼吸症候群の診断を行っています。さらに詳しい検査が必要な場合には関連病院への紹介を行います。

治療

鼻の形態異常に対する手術

アレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲症、肥厚性鼻炎などによる高度の鼻閉に対して鼻中隔矯正術および粘膜下下甲介骨切除術や鼻粘膜焼灼術および鼻内後鼻神経凍結術などを行います。
また、鼻詰まりのためにCPAPの装着が困難な場合にもこれらの手術で鼻腔の形態を改善します。詳しくは下記リンクをご参照ください。

扁桃摘出術、アデノイド
切除術

小児の睡眠時無呼吸症候群は口蓋扁桃の肥大、アデノイドの肥大が主な原因となり、これらを摘出することにより高率に症状が改善されます。
小児、あるいは大人でも、扁桃肥大がいびき、無呼吸症候群の原因と考えられる場合は口蓋扁桃摘出術やアデノイド切除術を行います。
扁桃やアデノイドの手術は当院では行えませんので他の病院を紹介します。

LAUP・UPPP

LAUP

LAUP

LAUPは口蓋垂口蓋形成術の略で、いわゆる「のどちんこ」とその周りの粘膜をレーザーなどを用いて広げる手術です。
人によってはやや術後疼痛があり、効果も個人差があります。いびきに対しては有効な場合もありますが、睡眠時無呼吸症候群にはあまり効果が期待できないと言われています。
当クリニックでも15分ほどの日帰り外来手術で行います。(3割負担で約3万円)

UPPP(Uvulopalatopharyngoplasty、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)

UPPP(Uvulopalatopharyngoplasty、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)

中等度の睡眠時無呼吸症候群が適応となります。
口蓋扁桃を摘出、扁桃腺の後方、左右に広がる粘膜の襞である軟口蓋、その中央部口蓋垂を短縮し、喉の空間を広げる手術です。有効率は60%と言われています。
術後疼痛があり、数日間の入院が必要です。この手術が適応の場合は他の病院を紹介します。

睡眠時無呼吸症候群の手術のよくある質問はこちら

歯科用マウスピース

軽症の場合、歯科でマウスピースを作成し、下顎を前方に固定する事によって気道を広げる方法もあります。
2004年4月から一定の基準を満たした場合に限って、健康保険の適応になりました。保険外では数万円程度の自己負担になるといわれています。

CPAP(Continuous positive airway pressure)

CPAP(Continuous positive airway pressure)

高度な睡眠時無呼吸症候群や肥満のある場合、また手術的治療を希望されない場合が適応となります。
睡眠時に鼻のマスクを装着していただき、持続的に空気を送り込むことにより閉塞した喉の空間を広げます。(図8)
有効率が高く睡眠時無呼吸症候群の中心的な治療法となっていますが、装着を中止すると無呼吸は元に戻るために、基本的にはずっと使い続ける必要があります。
また、鼻にマスクをすることなどの不快感から半数近くの患者さんが使用が難しいとの報告もあり、鼻閉を伴う場合にはその治療も必要となります。
CPAP療法も一定の基準を満たした場合に健康保険の適応となり、3割負担の方で月5,000円弱の自己負担となります。
ただし、この場合月1回の医療機関への受診が義務付けられています。当院ではCPAP装置の貸し出しを行っております。

監修医師

医院名 医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック
院長名 川村繁樹
資格 医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医
川村繁樹