ホームページの見分け方
近年個人で開業しているクリニックでもアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症といった鼻・副鼻腔の日帰り手術を行っているところも増えてきました。
そのようなクリニックではホームページ上に手術の案内が書いてあると思いますが、どこでも
「専門性の高い」
「豊富な実績」
「最新の設備」
など同じように書いてあって、いざとなった時にどこのクリニックを選択すればいいのか迷われることもあると思います。
もし私が患者さんの立場になった時には、本当に専門性が高くて、実績が豊富で信頼がおけるクリニックをホームページを吟味して選びます。
そのためのホームページを見るノウハウがあります。
この記事ではクリニックや医師を選択するときにどのような点に注意してホームページを見ればいいのかご参考になれるようなお話をしたいと思います。
ただ私自身、大学勤務医時代から長年鼻を専門に臨床をやってきており、開業してからも鼻・副鼻腔の手術をするにあたり患者さんに選んでもらえるクリニックでありたいと思ってホームページを作っておりますので、若干手前味噌くさかったり当院をアピールするような内容になってしまうかもしれません。
その辺りは割り引いてごらんください。(笑)
1:医師の履歴
専門性をアピールしているホームページでは医師(院長)の履歴も掲載されてることが多いと思います。
ここでチェックすべきは
A.卒業大学
B.医者になってから開業までの勤務医の年数
C.勤務中の役職/医員、助教、講師、准教授、教授など
D.博士号の有無と内容
などです。
A.卒業大学
医学部の難易度は大学によって異なりますが、難易度の低い大学卒業だから臨床能力が低いかというと必ずしもそうではありません、逆もまた然りです。ちなみに私の母校の関西医科大学の難易度はちょうど中間くらいかと思います。(^_^;)
なお卒業大学と大学院や入局する大学は異なる場合もあります
A 大学院入局やA 大学耳鼻咽喉科入局は必ずしもA 大学大学卒業とは限りません。卒業した大学が実家から遠いとか、母校とは別の大学院に進み研究したいとかの理由で母校以外の進路を選ぶ場合もあります。
また開業場所が母校と近いかどうかもおよそわかりますので大学病院との連携が可能かどうかもおよその判断がつきます。
ちなみに当院は母校やその関連病院とも時間的、距離的に近い場所にあり良好な病診連携が保たれています。
B.医者になってから開業までの勤務医の年数
卒業して耳鼻科の専門医になるまで約6年、その後、耳、鼻、頭頸部などの専門領域を選択してその分野で一人前になるのには最低でも5年くらいはかかります。従って卒業して10年以上は勤務医として働かなければある分野で一人前になるのは難しいと思います。
特に手術を専門として行う場合には指導を受けて数年、自分が執刀して数年、後輩に指導して一人前ですが、それまでに数年はかかります。
C.勤務中の役職
大学の医局に所属してその貢献度が認められれば医員から助教、助教から講師と役職がついていきます。講師までなっていれば何らかの専門性をもって大学に貢献していると認められている場合が多いです。
大学によっては講師以上でないと開業してからの日帰り手術は認めないという医局もあるようです。
D.博士号の有無と内容
博士号には大学院に進学して取得する課程博士と、大学院に進学しなくても取得できる論文博士があります。
一般的には課程博士の方が論文博士より格上だと言われています。
ただ博士号は取得したからといってそれが臨床能力に直結しているわけではありません。博士 論文のタイトルを見ればそれが基礎研究か臨床研究かおおよその見当がつきます。
ちなみに私が取得した博士号は「アレルギー性鼻炎に対するレーザー手術」で臨床研究です。論文博士ですのでやや格が下がりますが、この研究がその後の後鼻神経切断術など新しい術式の開発に繋がりました。
2:手術実績
やはり安全で良い手術を行うにはそれ相応の手術数をこなす必要があります。私が存じている先生方でも、その分野のトップの先生方はほぼ例外なくホームページに手術件数を記載しています。
ここで注目すべきは開業前の大学勤務医時代の手術件数です。開業して急に手術を始めるのではなく大学勤務医時代からそれなりに手術件数をこなしている方が、きちんと指導を受け周りの評価も受けながら手術を行っているので専門性が高いといえるでしょう。
私は大学時代から10年以上鼻・副鼻腔を専門として手術を行っており、勤務医時代は年間50~100件、退局後の民間病院での2年半で約350件、開業してからは5000件以上の手術を行っております。恐らく個人での手術件数は全国的にもかなり多いと思います。
「メニュー」→「日帰り手術」→「日帰り手術について」→「手術実績」を参照してください
3:学術活動
要するに学会発表や論文の執筆あるいは医学雑誌からの依頼原稿などです。
実はホームページ内の記事でその医師の信頼性なり専門性なりを推し量るのに最も重要な情報がここには隠されています。と言いますのも、医師は大学、あるいはその関連病院で何かしら専門的なことを行えば、ほぼ必ず学会発表あるいは論文執筆を行います。逆に言えば何も学会発表や論文執筆がなければ特に専門的なことを何もしてこなかったということでもあります。
学会発表の内容を見れば、その医師が基礎を専門にしてきたのか、臨床、それも耳、鼻、頭頸部の何を専門にしてきたからおよそ分かります。
またもう一つ大事なことは、大学などの医局に属しているときにのみ論文発表を行っているのか開業後も継続して学会発表や論文執筆を行っているのかということです。大学時代にいくら熱心に学術活動をしていても、開業後一切学術活動を行わず手術のみを行っていたのであれば営利主義と思われかねません。
開業後も自分の手術内容、成績などを公表して他大学のその分野を専門とする先生方に良くも悪くも評価してもらって初めて真っ当に手術を行っていると認めてもらえます。
やはり私の周りの第一線でずっと活躍されている先生は例外なくホームページ上に学会発表や論文などの学術活動を記載されています。
当院ホームページの「メニュー」→「医師紹介」→「学術活動」ご覧ください。
2001年までが大学勤務時代、2002年から2004年が岩野耳鼻咽喉科サージセンター時代、2005年からがクリック開業です。一貫して鼻科学の臨床を専門としているのがおわかりいただけると思います。
なお、「発表」「論文」「シンポジウム」「講演」「著書」とありますがその違いを少し説明します。「発表」は文字通り学会発表ですが、これは誰のチェックも入りませんのでわりとハードルは低いです。
「論文」は発表したものを文章として残すものですが、これになると査読といって他の専門家のチェックが入り、内容に不備があったり学問的に正当性がないと認めてもらえません。結構論文執筆には労力が必要です。
「シンポジウム」はその分野の第一人者が数人集まって共通の議題に関して発表、討論を行うものです。シンポジストに指名されたということは、その分野で専門家と認められているとも言えます。
「講演」学会や医師会などから依頼されて、あるテーマについて1時間ぐらいお話をするというものです。シンポジウムと同様にその分野での専門性が高いと認められてるということになります。シンポジウムや講演のテーマを見ればその先生の専門分野が大体分かると思います。
「著書」これも医療系の雑誌からある分野について執筆を依頼されて書くものです。編集者というよりその雑誌の監修をされている先生からの推薦で執筆依頼が来ることがほとんどです。
4:手術の適応・手術方法
どのような症状、病態にどのような手術が適応になるかについての説明ですが、日帰りや短期滞在手術を行うホームページであればほぼ記載があると思います。
ただ、その内容は通り一遍のものもあれば詳細に説明しているものもあり、比較すればその違いや専門性が分かります。
当院のホームページでは術式の説明以外に手術成績や危険性・合併症、Q&Aなどで患者さんによく質問される内容を記載しています。
日帰り手術の利点だけではなく、過去の経験から得た危険性やその対応方法などもご参考にしていただけると思います。
5:終わりに
やはり手前味噌っぽい、アピール臭い記事になってしまいました。(^_^;)
思えば20年以上前に鼻科学を専門とした当時はクリニックで日帰り手術を行う施設は全国的にもありませんでしたので、まさか将来、自分が開業して手術を行うことは想像もしていませんでした。
ただ、その当時からより良い手術を行うには手術成績や手術方法も学会などで公開して、他の批評を受けることも重要だとの考えで継続的に学術活動も行ってきました。その蓄積と集約がこのホームページですが、今回お話したことを踏まえてホームページを見ていただければ、鼻科手術に真摯に向き合ってきたことはご理解いただけるのではないかと思っております。m(_ _)m