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鼻呼吸できない(鼻閉)
原因と対処法

鼻呼吸できない(鼻閉) 原因と対処人間は、通常は鼻で呼吸するようにできています。
ところが鼻腔内で炎症など何らかの疾患がおこると、空気の通り道が狭くなってしまい、息をしにくい状態になります。これが鼻づまりで専門的に言うと「鼻閉」といいます。またこの状態を「鼻呼吸障害」といいます。
鼻呼吸ができないと、人は口で息をするようになりますが、口呼吸は自然の状態ではないため、さまざまな弊害がおこりますので、放置せず、耳鼻咽喉科を受診してください。

鼻呼吸ができないことで
起こる悪影響

1. 口の中(口腔)に対する影響

  • 口を開けていることで、口の中が唾液で十分潤わなくなると、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。
    また口内で雑菌が増え口臭の原因ともなります。
  • 鼻で呼吸できないため、食事のときに息苦しくなります。
    そのためよく噛まずに急いで飲み込んでしまったり、音をたてたりします。あわてて飲み込むと消化器にも負担がかかります。
  • 口呼吸の状態が続くと、歯並びや顎にも負担がかかり、形が変化してしまう可能性もあります。

2. のど(咽頭=いんとう)に対する影響

  • 口で呼吸すると、外部の冷気がそのまま咽にあたり、炎症がおこりやすくなったり、乾燥のために痛みや違和感を覚える原因となったりします。
  • 口を開けているとのどの空間が狭くなります。睡眠時無呼吸症候群の方は、睡眠時に口呼吸になっていることによって症状が悪化する場合があります。

3. 声帯より奥側の下気道に対する影響

  • 鼻で呼吸することによって、吸気の湿度や温度を適切に保つことができますが、口呼吸になると外気の乾燥や冷気がそのままとりこまれ、気管支や肺に刺激を与えます。そのため気管支喘息などの症状は悪化する可能性があります。
  • 鼻呼吸の場合、鼻の粘液や鼻毛によって外気内の塵や細菌などのフィルターの役目を果たしますが、口呼吸の場合はダイレクトに気管支や肺にホコリや塵、細菌が入りやすくなります。

4. 睡眠に対する影響

  • 睡眠時無呼吸症候群の原因となる可能性があります。またいびきをかきやすくなります。
  • 睡眠の質が下がり、眠りは浅くなります。そのため、疲れが残ったり寝不足を感じたりすることもあります。

5. こころへの影響

  • 口呼吸になることによって、呼吸の質が下がり、集中力に影響がでると、注意が散漫になったり思考力が低下したりします。そうなると仕事の質や学習能力の低下にもつながります。
  • 睡眠時無呼吸症候群などだけではなく、いびきや睡眠の質の低下によって睡眠不足を感じたり疲労が抜けないなどの症状がでると、日中もだるさを感じたりいつも疲れを覚えるようになります。そのため精神的にも悪影響がでて、深刻な場合は抑うつ症状などを発症することもあります。

このように、鼻呼吸ができない症状では体にも心にも、大きな悪影響があります。
気になる症状があるときはお早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

鼻呼吸ができない原因疾患と
治療方法

慢性副鼻腔炎

鼻づまりがあって、粘り気のある鼻汁が出る場合、慢性の副鼻腔炎が考えられます。
炎症による鼻づまりだけではなく、鼻茸(鼻ポリープ)が空気の通り道を狭めてしまう可能性もあります。
治療は抗菌剤などを内服するほか、通院時に鼻吸引、洗浄、ネブライザーによる薬液噴霧などを行います。内服による効果が得られないときや、鼻茸が大きくなってしまっているときなどは手術を検討します。
手術は内視鏡下副鼻腔手術ですので、出血や痛みも少なく、日帰りも可能なものです。

副鼻腔炎詳しくは

アレルギー性鼻炎

くしゃみや鼻水とともに鼻づまりがあり、目などに痒みを感じたりするケースでは、アレルギー性鼻炎が考えられます。
スギ、シラカンバ、ブタクサなどによる季節性アレルギー性鼻炎や、ハウスダスト、ダニなどによる通年性アレルギー性鼻炎があります。
アレルゲンを特定し、生活上原因物質を遠ざけるとともに、対症療法として点鼻薬や内服薬によって各症状を抑えます。
どうしても鼻づまりが苦しい場合は、鼻の中のヒダの一部を切除する下鼻甲介切除術や、レーザー照射によって鼻の粘膜を焼いてアレルギー反応を軽減する手術、アレルギーを起こす後鼻神経を切断する手術などを検討します。

アレルギー性鼻炎詳しくは

薬剤性鼻炎

鼻づまりがあって点鼻薬を長期間使用していると、最初のうちは効果的だった薬の効果がだんだん薄れてきたり、ついには症状が悪化してしまったりすることがあります。これは点鼻薬に含まれる血管収縮剤の影響です。血管収縮剤入りの市販点鼻薬は大変効果が高いのですが、用法や用量を守って、短期間に限って使用することが大切です。
点鼻薬を長期間使用していて、鼻づまりが治らなかったり、だんだんひどくなったりする場合は、すぐに使用を中止して耳鼻咽喉科を受診してください。

薬剤性鼻炎詳しくは

アデノイド増殖症

アデノイドは、鼻の奥にある上咽頭という部分にある扁桃腺と同様の組織です。このアデノイドは幼少時に大きく肥大し、その後だんだんと小さくなってくることが多いのですが、あまりに大きくなりすぎると、鼻の奥を塞いで鼻呼吸ができなくなります。
口蓋にある扁桃の肥大も同様ですが、小児の睡眠時無呼吸の原因ともなります。肥大の程度によっては、手術によってアデノイドや口蓋扁桃を切除することを検討します。

腫瘍

鼻の奥や咽にできる良性や悪性の腫瘍が空気の通り道を塞いで、鼻呼吸ができなくなってしまうことがあります。
治療法は腫瘍のできた場所や種類、良性か悪性かによっても異なります。まずは腫瘍があるのかどうか、どんな種類の物かを特定することが大切です。
風邪やアレルギー、副鼻腔炎などがないのに鼻づまりがする、鼻血が出るなどの症状があったら、お早めに耳鼻咽喉科で検査を受けてください。

急性副鼻腔炎

急性副鼻腔炎の多くは風邪を引いた後、副鼻腔まで炎症が及び発症します。そのさい、サラサラの鼻水ではなく粘り気の多い鼻水がでるケースは抗菌薬の処方が効果的です。検査などで細菌の種類を特定し、それに応じた抗菌薬を処方します。それと同時に鼻汁を吸引し鼻腔内を洗浄します。またネブライザーで副鼻腔内に薬液を噴霧する療法も有効です。
好酸球性副鼻腔炎は難病に指定されているものですが、ステロイド薬が有効なケースがあります。また生理食塩水による鼻うがいや鼻洗浄も有効です。

骨の構造に問題がある

鼻の穴の左右を隔てている鼻中隔という壁状の組織や、鼻腔のヒダである鼻甲介やその周辺の骨の異常など、鼻の構造に問題があって鼻づまりがおこっているケースでは、薬物療法は適用できませんので、基本的に手術を検討することになります。鼻づまりによって鼻呼吸ができず、口で呼吸していると、最初はつらく感じるのですが、だんだんとその状態に慣れてしまい、つい放置しがちになります。しかし、口呼吸は体や心の健康にさまざまな悪影響を与えます。
ただし、適切に治療しさえすれば、すっきりと治ることが多い症状でもあります。放置せずに一度耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

鼻呼吸できない症状に関する
Q&A

鼻呼吸ができない原因は何ですか?

鼻呼吸ができない主な原因は、鼻詰まりを引き起こす疾患や状態です。
感冒、上気道炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、肥厚性鼻炎、鼻ポリープ、鼻中隔彎曲、副鼻腔炎、アデノイド増殖症または鼻の外傷などが挙げられます。

鼻呼吸ができない場合、どのような症状が見られますか?

鼻呼吸ができないと、次のような症状が現れることがあります。
口呼吸が増える、鼻づまりや鼻水が継続する、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクが高まる、嗅覚の低下、頭痛や疲労感などです。

鼻呼吸ができない場合、自宅でのケア方法はありますか?

一時的な鼻づまりの場合は、うがいや塩水洗浄を行い、湿布や加湿器を利用して湿度を上げることが助けになる場合があります。
ただし、長期間続く場合や他の症状がある場合は、専門医の診断を受けることをお勧めします。

鼻呼吸ができない場合、何科を受診すれば良いですか?

鼻呼吸に関する問題は、耳鼻咽喉科の専門医に相談することが適切です。
専門医であれば鼻の疾患や呼吸器系の問題を専門的に診断・治療できます。

鼻呼吸ができない場合、手術が必要なことはありますか?

一般的に、感冒や上気道炎などの感染が原因の場合は薬物療法で改善できる場合が多いです。しかし、原因がアレルギー性鼻炎や鼻中隔彎曲症、下鼻甲介の肥厚による肥厚性鼻炎や鼻ポリープを伴う副鼻腔炎などが原因である場合は薬物療法は一時しのぎになる場合が多いです。
根本的な原因が問題である場合、鼻腔形態改善術や後鼻神経切断術、副鼻腔炎手術などが必要なことがあります。
手術の適否については専門医の診断に基づいて判断されます。

監修医師

医院名 医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック
院長名 川村繁樹
資格 医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医
川村繁樹