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鼻茸・鼻ポリープの原因と
治療方法

鼻茸、鼻のポリープとは?
放置しておくのは危険な
鼻の腫瘍は?
原因や治療方法と共に解説

「鼻づまりがなかなか治らない」「ものの匂いを感じにくくなった」といった症状に悩まされている人はいませんか? それはもしかしたら、鼻茸(はなたけ)ができている可能性があります。鼻茸は良性のポリープですが、放置しておくと鼻の形が変わってしまったり日常生活に大きな支障が出たりすることもあるでしょう。
今回は、鼻茸ができる原因や治療方法を紹介します。

1:炎症性鼻茸(ポリープ)
とは

炎症性鼻茸(ポリープ)とは鼻茸とは、一般的には鼻の中にできる良質のポリープのことです。ほとんどの場合は鼻腔や副鼻腔の粘膜が炎症によって腫れて、中鼻道や嗅裂、総鼻道といった鼻の中まで出てきた物です。図:鼻茸(炎症性ポリープ)

2:鼻茸に伴う症状

鼻茸が小さいうちは症状がありませんが、大きくなると鼻づまり匂いを感じにくくなる症状が現れます。また、鼻水が増えたり鼻水が喉の奥に落ちる後鼻漏の症状がひどくなる可能性もあります。
血管を多く含んだ鼻茸は出血しやすく鼻血の原因にもなります。
さらには鼻茸が大きくなると疼痛が起こることもあり、鼻茸の部位によっては眼痛や前頭部痛の原因になります。

3:鼻茸の原因となる病気

鼻茸は、アレルギー性鼻・副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎・気管支ぜんそくなど、鼻水・鼻づまりが症状として現れる病気を発症するとできやすくなります。特に、慢性副鼻腔炎の中でも「好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)」は、多数の鼻茸がくり返しできるのが特徴です。好酸球性副鼻腔炎は、厚生労働省により指定難病に定められています。

4:特殊な鼻茸、鼻茸と
鑑別必要な病気

4-1.後鼻孔ポリープ

後鼻孔ポリープ後鼻孔ポリープは上顎洞粘膜の慢性炎症が原因となって上顎洞から鼻の奥の後鼻孔まで達するポリープの事です。(図2)通常のポリープより大きく、鼻の通り道を完全に塞ぐ場合も少なくないので鼻詰まりが起こりやすくなります。

図:右の後鼻孔に達するポリープ CT所見

片側性に発症することが多く、薬や処置などの保存的治療には抵抗性で手術が必要となることが多いといわれています(参考文献❶)。ポリープの基部を残すと早期に再発し複数回手術が行われる症例も少なからずあります。本疾患の有病率は鼻ポリープ患者全体の4~ 6%で、10代の比較的若年者に多く発症すると報告されています(参考文献❷)。

4-2.出血性ポリープ

出血性ポリープ鼻茸、ポリープの中でも血管成分を多く含んで血流が豊富で出血しやすいものを出血性ポリープと呼ぶことがあります。副鼻腔の炎症が原因となる一般的なポリープとは異なり、その実際は血管の増生が原因となる血管腫の場合も少なくありません。
通常のポリープと比較して暗褐色で触ると出血しやすい特徴がありますが見た目だけでは区別がつきにくい場合もあります。
図:左鼻腔に充満する出血性ポリープ

安易に切除すると大出血する場合もありますので、前もって出血を起こしにくい処置をしてから手術を行う必要があります。
治療せず放置しておくと、破れて大量出血となる危険性もあるので注意が必要です。

4-3.内反性乳頭腫 (inverted papilloma)

内反性乳頭腫 (inverted papilloma)ポリープと鑑別が必要な良性腫瘍に内反性乳頭腫があります。炎症性のポリープと比べるとやや表面が不整で不透明、分葉様状の特徴がありますが、副鼻腔炎に伴うポリープと混在することも多く、見た目では区別がつかないことも少なくありません。

図:左嗅裂の内反性乳頭腫
中鼻道の炎症性鼻茸(ポリープ)とは視診上での区別は困難でした。

鼻茸を疑われる患者のうちでの乳頭腫の割合は0.3%といわれています(参考文献❸)。

内反性乳頭腫は病理学的には良性ですが、再発しやすく扁平上皮癌を5 ~20%程度に合併するとされており、また再発 繰り返すうちに悪性転化することもある事が問題です。
この腫瘍は薬で治癒することはありませんので基部を含めて手術的に切除する必要があります。

内反性乳頭腫の好発部位は中鼻道,中鼻甲介, 下鼻甲介などの側壁ですが基部や付着部の骨の一部を含めた完全に摘出する必要があり、腫瘍の存在部位、進展範囲によっては内視鏡のみではなく、皮膚に切開を加えて摘出する場合もあります(参考文献❹)。

4-4.悪性腫瘍(扁平上皮癌
や嗅神経芽細胞腫など)

鼻腔や副鼻腔が原発の悪性腫瘍の頻度は10万人に0.5~1人と非常に稀で、前悪性腫瘍の0.5%、頭頚部癌の3%とされています(参考文献❺)。
悪性腫瘍の外観は炎症性のポリープと比べると表面不整で易出血性、一部は壊死しているような場合もあり悪臭を伴うことも少なくありません。(症例画像参照)

片側性で少量の出血を反復している場合は悪性腫瘍を念頭に置いて診察することが重要です。
視診やファイバーで疑わしい場合はCTやMRIの検査も行います。骨の破壊や頭部、眼窩などの隣接する器官に進展している場合は悪性腫瘍が強く疑われます。(CT画像)

症例画像;右鼻・副鼻腔腫瘍(扁平上皮癌)

右鼻・副鼻腔腫瘍(扁平上皮癌)症例画像では一部出血と壊死を伴った右鼻腔の腫瘍を認めます。

CT画像:症例の患者さんのCT所見です。上顎骨に骨破壊所見も認めます。

症例の患者さんのCT所見です。上顎骨に骨破壊所見も認めます。嗅神経芽細胞腫は嗅裂部の嗅上皮から発生する稀な腫瘍で、初発症状として鼻閉、鼻血、嗅覚障害、眼痛、頭痛などがあります。

症例画像2:右嗅裂の神経芽細胞腫

右嗅裂の神経芽細胞腫悪性腫瘍の確定診断には病理検査が必須ですが悪性リンパ腫などでは一度の検査では診断が困難な場合もあります。

5:鼻茸を放置しておく
デメリット

鼻茸は、自然治癒する可能性はほとんどありません。
炎症性の鼻茸で小さい時は抗生剤などの薬物療法で小さくなったり、稀には消失する場合もありますが、感冒などで感染が起こると再び増大することもあります。
基本的にはある程度以上大きさの鼻茸は外科的な切除をしない限り治癒しないと思われます。
初期の場合はまた、放置しておくと鼻茸が大きくなる可能性もあります。さらに、前述したように鼻茸が大きくなると鼻づまりがひどくなったり、鼻の形が変わったりすることもあるでしょう。そのうえ、鼻呼吸ができなくなると、ドライマウスになったりいびきなどをかきやすくなったりします。
なお、鼻茸は一度治療しても再発することがあるため、鼻茸が一度発症したら適切な治療だけでなく定期的な通院や、経過観察が大切です。

6:鼻茸の治療方法

鼻茸の治療方法はその原因となる疾患によって異なりますが、基本的には摘出手術が必要です。

6-1.炎症性鼻茸
(ポリープ)の治療

アレルギー性鼻・副鼻腔炎鼻、慢性副鼻腔炎に伴う炎症性の鼻茸(ポリープ)は良性ですので小さい間は抗生剤などの薬物や処置でほぼ消失する場合もありますが、前述のように、一見無くなったように見えても感冒などの感染で再び増大する事が少なくありません。鼻茸(ポリープ)はある程度以上の炎症が起こっている場合に現れることがほとんどですので、逆に言うと鼻茸(ポリープ)がある場合は中等度以上の鼻・副鼻腔の炎症があると考えられます。したがって根本的な治療が多くの場合は必要になります。
根本的治療としては鼻茸を基部から切除し、その周囲の病的な粘膜も清掃する手術が必要で、ほとんどの場合は内視鏡下の鼻内操作で行われます。
当院でも重症の場合は全身麻酔で一泊入院、中等症以下の場合は局所麻酔の日帰りで行います。
炎症性の鼻茸(ポリープ)で再発しやすいのは副鼻腔炎の中でも好酸球性副鼻腔炎に伴う鼻茸です。この場合は再発を予防するために局所あるいは全身的にステロイドを使用したり、再度切除したり、難治性の場合は近年では生物製剤の使用も行われます。

6-2.後鼻孔ポリープの治療

もう一つ鼻茸(ポリープ)で再発しやすいのは後鼻孔ポリープです。このポリープは基部が上顎洞の前方や底部にあることが多く、通常の副鼻腔炎に対する手術操作では完全に摘出する事が困難なために再発しやすいと考えられますが、再発を予防するには上顎洞と鼻腔の間に対孔と呼ばれる孔を空けて、そこから上顎洞内をできる限り清掃する事が有効です。
比較的10代の低年齢に多い疾患ですが当院でも治療に協力できる年齢であれば局所麻酔の日帰りで行います。

6-3.出血性ポリープの治療

出血性ポリープは基本的に良性ですので完全摘出すれば治癒ですが、通常の鼻茸と同じように安易に切除あるいは削ると、大量の出血を伴う事になります。
この場合はまずどの程度の血流があるのかを手術前に血管造影などで確認する必要があり、太い栄養血管がある場合には事前にその血管に対して塞栓術を施行してポリープの血流を減らしておく事が重要です(参考文献❻)。それでも想定外の出血が起こる場合がありますので基本的には入院手術が望ましいと思われます。
したがって当院では信頼できる提携の医療機関を紹介します。

6-4.内反性乳頭腫 (inverted papilloma)の治療

基本的には外科的な完全切除が必要です。通常の副鼻腔炎に伴う炎症性の鼻茸(ポリープ)にまぎれていて、術後に病理診断で判明する場合もありますが、完全に切除されている場合は再発しないか経過観察となります。内反性乳頭腫 (inverted papilloma)は基部の骨面も併せて削る必要がありますので術前に診断がついている場合、その進展具合によっては拡大手術が必要な事もあります。
再発の場合や術前に診断がついている場合は提携の医療機関を紹介します。

6-5悪性腫瘍(扁平上皮癌や嗅神経芽細胞腫など)の治療

悪性腫瘍の場合は病理学的診断や進展範囲、転移の有無などによって治療方法は大きく異なりますが、外科的切除に加えて放射線療法や化学療法が必要な場合もあります。
大学病院などの集学的な治療が行える医療機関を紹介します。

鼻茸に関するよくある質問

この項では、鼻茸に関するよくある質問を紹介します。

手術が怖いので、鼻づまりがひどくてもがまんして放置したいのですが大丈夫ですか?

鼻茸による鼻づまりは、自然に治ることはほぼありません。
鼻呼吸ができないとドライマウスになり、口臭や感染症にかかりやすくなるなど、デメリットばかりで放置のメリットは全くないので、きちんと治療を受けることが大切です。

鼻茸は、健康な人に突然できることはありませんか?

はい。慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などで鼻粘膜が長期間刺激された結果、鼻茸ができます。
健康な人の鼻腔内に突然できることはありません。
ただし、気管支ぜんそくを発症している場合、鼻づまりと鼻茸の発症が同時に現れることもあります。

鼻茸の手術は何度でも受けられますか?

受けられますが体の負担もあるので、定期的に検査を受けて再発を防ぐことが大切です。

全身麻酔で手術を受けても日帰りはできますか?

病院や症状によっては、日帰りも可能な可能性はありますが、無理をしてはいけません。

鼻茸だけ取ることはできますか?

通常の鼻茸は慢性副鼻腔炎に伴うもので副鼻腔の肥厚した粘膜の一部です。
鼻茸のみを切除するのは雑草の地表にでている部分のみを切り取る事と同様に、一見治ったように見えますが、すぐにまた伸びてきます。したがって病的な副鼻腔の粘膜を全て掃除しないと根本的には治りません。
ただし、悪性かどうかの診断を確定させる意味と好酸球性副鼻腔炎の確定診断で難病申請のために一部を切り取って調べる場合はあります。その場合は局所麻酔で10~20分程度で行います。

まとめ

炎症性の鼻茸(ポリープ)はもが発症する可能性があります。放置しておくほど治療が難しくなります。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を発症している人は、病院で定期的に検査をしてもらい、早期発見・早期治療を受けることが大切です。
また、好酸球性副鼻腔炎の場合は、治療実績のある病院を受診して治療を受けましょう。現在は技術も進み、鼻茸を日帰り手術で切除できるケースも増えてきました。
「仕事が忙しいから」と鼻づまりをがまんしないようにしましょう。

参考文献
  1. Yuca K, Bayram I, Kiroglu AF, et al
    Evaluation and treatment of antrochoanal polyps. J Otolaryngol 2006 ; 35 : 420―423.
  2. 上顎洞性後鼻孔ポリープの臨床的検討 浅香 大也 日耳鼻 115
    101-107,2012
  3. Garavello W, et al:Incidence of papilloma in recur-  rent nasal polyposis. Laryngoscope l l6 (2)
    221-223,  2006.
  4. 鼻茸の診療で注意すべきことは?濱田聡子
    JOHNS Vol.30 No.7 2014
  5. 当院における鼻腔・篩骨洞悪性腫瘍の検討 三浦 弘規 頭頚部癌 39(1)
    21-26 2013
  6. 鼻副鼻腔血管腫の3症例 米本 友明 耳展 37:6
    671-677 1994

 

監修医師

医院名 医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック
院長名 川村繁樹
資格 医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医
川村繁樹