はじめに
受験シーズンが近づいてきました。この時期になると鼻づまり(鼻水やくしゃみも)でお困りの受験生が親御さんに連れられて受診されることが増えます。やはり鼻水、鼻づまりがあると集中して勉強できませんし、症状を抑える抗ヒスタミン剤を飲むと倦怠感や眠気が出てやはり勉強できないという訴えが多くなります。受験直前であると薬物療法しか手段がないので点鼻薬を追加したり眠気の少ない抗アレルギー薬を処方しますが点鼻薬などは刺激でむしろ症状が誘発される場合もあります。このような中高生を見るたびに「もっと早くに根本的な手術を受けておられれば、もっと楽だったのに…」と思います。
未成年期(中学生、高校生)に
手術を勧める理由
アレルギー症状は免疫力が高まる中高生の時期が最も強く起こります。この時期は勉強やスポーツに重要な時期でもあります。勉強も勿論ですがスポーツでも鼻づまりや鼻水が多いと明らかにパフォーマンスが低下します。ボクサーが鼻血を出して口呼吸になった途端にスタミナが落ちてあえぎ呼吸になる姿を見たことがあると思います。もちろんサッカーや野球やダンスでも口呼吸になると持久力も集中力も低下して本来の実力が発揮できなくなります。
この人生において重要な時期に「大学に入ってから」とか「社会人になって落ち着いてから」とか先延ばしにすると、本来ならもう一段階も二段階も上のステージに到達できていたのにその機会をみすみす失う事にならないでしょうか。そのような患者さんを多く見かけますので「もったいないなあ…」と感じます。
当院では手術を受けられた患者さんに術後1~2ヶ月の傷が治った段階でアンケートにお答え頂いておりますが、アンケートでよく目にするのは「もっと早く手術を受けておけば良かった。いままでの○○年間がもったいなかった」との感想です。
多くは成人で何年も通院や市販の薬に頼っていて、良くならないので思い切って手術を受けた、という方の感想ですがたった一日の手術でここまで良くなるのであれば今まで費やした時間と費用は何だったのかというご意見です。プロのアスリートの方の手術も行いますが、鼻が良くなって疲れが全然違うとよく伺います。
中高生の場合は、ある意味では成人以上にその数年間は将来を左右する重要な時期になります。その重要な時期に鼻づまりや鼻水で本来の勉強やスポーツで能力が発揮できなかったり、必要以上に通院に時間を取られたりするのはもったいないと思ってしまいます。
あとになって「もっと上のレベルまで行けたのに…」と後悔されないようにして頂きたいと思います。
手術の方法
ここでお話する鼻水、鼻づまりの根本的な手術とは鼻中隔矯正術及び後鼻神経切断術(経鼻翼突管神経切除術)です。詳細は別の項で説明しておりますので省きますが、骨構造を改善しアレルギーや寒暖差などに反応する後鼻神経を切断する手術です。
以前から粘膜を焼く、いわゆるレーザー手術が無効な場合によく行われていた、より効果の高い手術ですが直近の研究で長期成績も良好で合併症や後遺症もほぼないことが判明し、私自身が論文として報告しております。
下に同一患者さんの手術前と手術後の鼻内所見を提示します。
鼻腔が広くなり鼻水も減っているのがおわかり頂けると思います。
手術前(右・左)
手術後(右・左)
手術に対する不安
ただ、中高生に対して骨を触るとか神経を切るとかのお話をすると、怖い…とか子供にはちょっと早いのでは…とかご本人や親御さんが躊躇されることも少なくありません。
確かに骨を触るとか神経を切るとかには抵抗感があることは理解できますが、この場合の骨は下鼻甲介と鼻中隔の骨ですので外見や強度の問題はほぼありません。以前は鼻中隔手術は17歳以降位がいいと言われていた時代もありましたが、その当時は鼻中隔の骨を広範囲に切除していた術式であり、現在は周囲を温存して必要な部分のみ矯正する術式に変わってきており、対象年齢も15歳位以降になってきております。下鼻甲介の骨は顔面の発育にはほぼ影響しませんので12歳以降は可能とも言われています。
またいわゆる鼻筋は鼻骨と呼ばれる骨であり、この部分は切除しません。
後鼻神経は鼻水、鼻づまり、くしゃみに関係する神経で嗅覚を司る嗅神経とは異なりますので嗅覚に支障をきたすこともありません。また全ての鼻汁分泌神経を切除するわけでもなく鼻汁はある程度は必要ですので後方の神経は温存して鼻汁を半分程度、すなわち人並み程度にします。
恐怖感や痛みが不安という場合は全身麻酔で眠っている間に行う事も可能です。
費用と手術時期に関して
もう一つ、しばしばもったいないと感じる事に医療費の問題があります。お住まいの地域によって異なるかもしれませんが18歳になる3月までは医療費負担が0割の場合もあります。この手術は健康保険でまかなえる手術ですので負担が0割だと手術費用もかかりません。それが3割になると高額療養費を適応しても一般的には8~9万ほどになります。(被保険者の年収で変わります)アレルギー反応や骨の構造異常は放っておいても治りませんし、薬で治るものでもありません。いずれ将来必要なものであれば早期に改善させておく方がメリットは多いと考えます。
手術申し込みの時期に関してお話すると、進学時期や医療費負担が変わるぎりぎりのタイミングで手術希望を伝えられる事も少なくありません。どのような手術でもそうですが、手術はやれば終わりではなく、その後1~2ヶ月の術後処置も効果を高めるためには必要です。どうしてもの場合は術後処置を他院の先生にお願いすることも可能ですが、執刀した医師が創部治癒まで診るのが理想的です。また、当院ではこの手術は平均すると約半年待ちです。偶然に早い時期に枠があったり、どうしてもの場合は水曜日の夕方に行える場合もありますが基本的にはそれくらいの時間的な余裕を持って申し込み頂ける方が確実です。
本手術は日帰りの局所麻酔でも一泊入院の全身麻酔でも可能です。局所麻酔でも点滴から眠くなるような鎮静剤、鎮痛剤を併用しますので強い痛みはありませんが、恐怖感が強い場合や民間保険の手術給付金や入院給付金の関係で入院での全身麻酔が希望の場合も対応致します。
この手術を日帰り局所麻酔でも一泊全身麻酔でも行う医療施設は全国でもほとんどありません。それゆえ本手術を希望される患者さんは多く、年間約300人の方に手術を行っており、全国のどの大学病院より多い件数です。
鼻づまり、鼻水でお困りの方は一度ご検討下さい。
監修医師
医院名 | 医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック |
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院長名 | 川村繁樹 |
資格 | 医学博士 関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授 身体障害者福祉法第15条指定医 |