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小児(幼児から高校生まで)
の鼻詰まりとその治療

小児(幼児から高校生まで)の
鼻詰まりとその治療

小さなお子様から学童期、高校生まで小児期の鼻づまりは様々な原因があり「鼻がつまる」以外にも色々な症状が引き起こされます。
ここでは小児期の鼻づまりの症状と原因、治療法を説明し、手術を行う場合の年齢的な制限や費用、麻酔方法についてもお話します。

症状

鼻が詰まるとは鼻から息ができない以外に様々な症状が起こります。
まず、鼻から息が吸えないので口呼吸になります。
いつも口を開けている状態になり、集中力がないとか、ぼーっとしている状態になりやすく、夜間も睡眠不足になり、夜中に目が覚めたり、寝付きが悪かったり昼間にうとうとしがちになります。ひどくなると睡眠時無呼吸症候群にもなります。また、鼻が詰まると鼻水も貯まりやすく、中耳炎になりやすくなったり、歯並びや顔の骨の発育にも影響しますので美容的な問題も出てきます。

以下のような症状がある時はご注意下さい。

  • 鼻呼吸ができない 口を開けて息をする
  • 集中力がない、頭が痛くなる
  • 昼間の眠気が強い ぼーっとしている
  • 夜間に目が覚める、睡眠不足
  • 交代性に鼻が詰まる
  • 常に鼻水がでる
  • 中耳炎になりやすい
  • 歯並びが悪くなる 顔の形が悪くなる

原因

鼻詰まりの原因となる病気も色々あります。

  • 急性鼻炎
  • アデノイド増殖症
  • 副鼻腔炎
  • アレルギー性鼻炎
  • 鼻中隔弯曲症
  • 肥厚性鼻炎
  • 薬剤性鼻炎

原因1-急性鼻炎

急性鼻炎とはいわゆる「鼻かぜ」のことで鼻の粘膜に生じる急性の炎症です。風邪ウイルスによるものが多いですが細菌感染もあります。
それ以外にはPM2.5や黄砂が原因となる場合もあります。

原因2-アデノイド増殖症

原因2-アデノイド増殖症

アデノイドは鼻の突き当たりに存在するリンパ組織の一つで咽頭扁桃とも呼ばれます。口の奥に見られる扁桃腺と同じリンパ組織です。ここは上咽頭と呼ばれる部位で、鼻からの空気の通り道でもあるのでアデノイドが大きいと鼻づまりの原因にもなります。
一般的にはアデノイドは3~5歳頃にもっとも大きくなりますが、その後徐々に小さくなって思春期までにほぼ消失します。

原因3-副鼻腔炎

原因3-副鼻腔炎

副鼻腔は顔の中にある腔(ほらあな)ですが、新生児では小さな上顎洞と篩骨洞のみが存在し、前頭洞はまだ存在しません。したがって新生児~幼児では副鼻腔炎はほぼありませんが4~5歳頃には上顎洞もかなり発育します。その後、7歳から8歳の間に非常によく発育し、思春期には前頭洞もほぼ完全に出来上がります。
したがって副鼻腔炎になりやすいのも4歳以降ですが小児の副鼻腔炎は成人に比べると治りやすいと言われています。なお、難治性の好酸球性副鼻腔炎は小児にはほぼありません。
副鼻腔炎になると鼻腔の粘膜まで腫れたり、粘調な鼻汁が貯まって鼻詰まりが起こります。

原因4-アレルギー性鼻炎

原因4-アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は花粉やほこりが主な原因ですが、それ以外には寒暖差や化学物質などで反応が起こることもあり、季節性のものと通年生のものがあります。

アレルギー性鼻炎は鼻の中の下鼻甲介という部位で主に起こり、アレルギー反応でこの部位の粘膜が腫れて鼻が詰まります。

原因5-鼻中隔弯曲症

鼻中隔は左右の鼻腔を隔てる一枚の板状の仕切りですが、骨と軟骨から成ります。顔の発育とともに鼻腔も発育し、鼻中隔の骨と軟骨も成長しますが、発育の違いによって軟骨が弯曲してしまいます。多少の弯曲はほとんどの方にありますが、程度が強いと鼻づまりの原因になります。

原因6-中鼻甲介蜂巣
(ちゅうびこうかいほうそう)

鼻のやや奥で上の方には中鼻甲介と呼ばれる突起が存在します。この突起は一枚の板状の骨の周りを粘膜がおおっているのが通常ですが、1~2割の割合で骨の中に空気が入った状態で発育する場合があります。この空気は周りと交通しませんで鼻の中に風船が入ったような状態で鼻詰まりの原因になります。

原因7-肥厚性鼻炎

鼻の下の方に存在する棚状の突起を下鼻甲介と言います。
この内側が骨で、周りは粘膜でおおわれていますが、骨や粘膜が肥厚すると鼻の中が狭くなります。

原因8-薬剤性鼻炎

鼻づまり治療に使われるスプレータイプの薬にはしばしば血管収縮剤が含まれています。

「塩酸ナファゾリン」とか「塩酸トラマゾリン」などの成分がそれですが、これらの成分を含む点鼻薬は5分程度で効き目が現れ、効果も強いので、頻回に、かつ長期に使用しがちです。この点鼻薬は下鼻甲介の粘膜を収縮させますが下鼻甲介内は血管が豊富で徐々に効かなくなり、使い続けるとむしろ腫れがひどくなってきます。

鼻詰まりの治療

治療1-薬

最も一般的には薬の治療が行われます。
よく使われるのがアレルギー性鼻炎などに有効な抗ヒスタミン剤です。近年は様々な抗ヒスタミン剤があり、眠気の少ないものや1日1回ですむものもありますが、相性は個人差があるようです。急性鼻炎や風邪の時は一時的な服用でよくなると思います。ただし慢性的な鼻詰まりには薬の服用をやめると元に戻ります。
血管収縮剤を含んだ点鼻薬もよく用いられます。速効性があり効果も高いですが、長く、頻回に使うと薬剤性鼻炎になる可能性があり注意が必要です。ステロイドの点鼻薬は薬剤性鼻炎の心配はないと思います。点鼻薬もやめると徐々に元の状態に戻ります。

治療2-舌下免疫療法

アレルギーの原因となる抗原を少しずつ体内に入れる方法を免疫療法と言いますが、近年、抗原を含んだ治療薬を口に含み体質を改善し、アレルギー症状を抑えたりする方法が開発されました。これが舌下免疫療法です。治療薬にはスギ花粉症用のシダキュアやダニ用のミティキュアなどがあります。

根本的によくなる可能性も6~7割はありますが数年間の長期に服用する必要性やあまり効かない可能性も2~3割あり、花粉症には花粉時期前からの開始が必要です。
また、まれにアナフィラキシー反応(じんましん・腹痛・息苦しさ・ショック)などの危険性があります。

治療3-耳鼻科での処置

耳鼻科では鼻水を吸い、粘膜を縮める薬を鼻に中に噴霧します。
またネブライザーと呼ばれるステロイドや抗ヒスタミン剤を霧状にして鼻の中に噴霧する治療も行います。
(当院では現在新型コロナ感染症とエアロゾルの関係で休止しております)

治療4-鼻詰まり改善の裏ワザ

鼻を温める

タオルを熱すぎない程度のお湯につけて鼻を温めることで、鼻の中の血行を良くするとともに、適度な湿り気を与えて鼻が通りやすくします。

脇の下を刺激する

脇の下にペットボトルを20秒ほど挟み続けると、反対側の鼻の穴が1~2分間通るようになります。これは脇の皮膚の下に交感神経が通っていて、脇の圧迫により体の反対側の交感神経の活動が高まるからです。交感神経を刺激すると下鼻甲介の血管を収縮させ、一時的に鼻の通りがよくなります。
あまり長く続けると手がしびれる可能性もあります。

鼻のツボ

鼻のそばにある、「迎香」(小鼻の出っ張りの付け根)と「天迎香」(小鼻のつけね)というツボは、鼻づまりに良いとされています。
このツボを押すときは、両手の人差し指の先で、斜め45度の角度で上に向かって押すのが効果的とされています。

治療5-手術

薬の治療や舌下免疫療法以外にも手術による治療があります。
詳しくは他のページでも説明しておりますが、小児の場合は「何歳からできるの」「効果はずっと続くの」「手術の痛みは」などのご質問をよく頂くので、ここではそのあたりの事を説明します。
当院で行う手術は全て健康保険の対象ですが、費用や高額療養費制度の詳しくはこちらをご参照下さい。

手術1-アデノイド増殖症

この治療は薬とかは効きませんので基本的に手術が必要です。ただほとんどが年齢と共に小さくなっていきますので、それほど大きくなかったり、症状が軽い場合は経過観察でもいいかもしれません。
手術が必要となるのは鼻の奥を塞ぐほど大きくて、無呼吸の原因になったり、中耳炎や慢性副鼻腔炎が治りにくい原因になっている場合です。対象年齢はおよそ3歳以降になります。現在ではほとんどの施設で全身麻酔下、数日の入院で行います。同時に口蓋扁桃を摘出する場合も多いです。
(当院ではアデノイドの手術は行っておりません)

手術2-副鼻腔炎

小児の副鼻腔炎は大人に比べて治りやすいい傾向にあります。したがってまずは薬の治療を行うのが一般的で、基本的にはある種のマクロライド系抗生剤を少量かつ数ヶ月の長期投与を行います。これで治らない場合は手術が必要な場合もあります。小児の副鼻腔炎には難治性の好酸球性はほぼありませんので大人より治りやすいと考えられますが、風邪とかで再発する可能性はあります。
対象年齢はおよそ10歳以降で、ポリープを取る程度の軽度であれば8歳位から局所麻酔の日帰りでも可能ですが、多くは一泊二日の全身麻酔で行います。全身麻酔の場合は手術時の疼痛はありません。
片側副鼻腔手術の手術点数と費用は以下の通りですが小児でⅣ型はほとんどありません。

内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅱ型
(副鼻腔単洞手術)
12,000点 36,000円
(3割負担)
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型
((複数洞)副鼻腔手術)
24,910点 74,730円
(3割負担)
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型
(汎副鼻腔手術)
32,080点 96,240円
(3割負担)

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手術3-アレルギー性鼻炎

薬や免疫療法でよくならない、一時的にしか効かない、あるいは副作用が心配な場合は手術の適応になります。

鼻粘膜焼灼術(レーザー手術、ラジオ波下甲介焼灼術、ラジオ波凝固術)

下鼻甲介の粘膜がアレルギー性鼻炎で腫れている場合は適応になります。ただし、数年で再発する可能性があり、鼻中隔や下鼻甲介の骨構造に問題があったり、鼻水やくしゃみが高度な場合が効果が少ない可能性があります。手術中の痛みはほぼありませんので鼻を吸ったりする耳鼻科的処置ができる年齢であれば問題ありません。対象年齢はおよそ10歳以降で局所麻酔、日帰りで行います。

鼻粘膜(下甲介)
焼灼術(両側)
約8,000円(通気度検査含む)
(3割負担)

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後鼻神経切断術

鼻詰まりだけでなく、鼻水やくしゃみも多い場合、鼻粘膜焼灼術が効かなかった場合,長期の効果を希望する場合は適応になります。アレルギーを起こす下鼻甲介で下鼻甲介骨を除去したのちに後鼻神経を切断する方法です。この部分は顔面骨の発育ともあまり関係しないので年齢的な制限は強くありません。対象年齢は12~13歳からですが、1時間程度かかる手術ですので中学生くらいまでは全身麻酔で、高校生位からであれば局所麻酔の日帰りでも可能です。

経鼻腔的翼突管神経切除術
(後鼻神経切断術)
両側60,920点 約18万円
(3割負担)

高額療養費制度の対象になります。

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手術4-鼻中隔弯曲症

鼻中隔の弯曲が高度で鼻詰まりの原因になっている場合は、薬や処置では治りませんので基本的には手術が必要です。
ただし鼻中隔が弯曲していても、下鼻甲介の腫れが薬や他の手術などで抑えられて鼻詰まりが改善している場合は手術を急ぐ必要もありません。
以前は骨の発育が止まる18歳以降が手術対象でしたが、近年の手術は鼻中隔の湾曲部を必要最小限に矯正する手術であり、より低年齢でも行う傾向があります。施設によっては10歳以降、あるいは14歳以降で行う所もあります。

対象年齢は当院でも適応を吟味して15歳くらいから手術を行っております。
局所麻酔の日帰りでも一泊二日の全身麻酔でも可能です。

鼻中隔矯正術 8,230点 約25,000円
(3割負担)

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手術5-肥厚性鼻炎・薬剤性鼻炎

下鼻甲介が肥厚して鼻詰まりの原因となっている場合です。薬剤性鼻炎であれば血管収縮剤を含む点鼻を中止して、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬に変えることによって腫れが引いてくれば問題ありませんが、腫れが続く場合は手術が必要です。また下鼻甲介の骨が肥厚している場合は薬での改善は難しく、手術の適応になります。この場合は粘膜下下甲介骨切除術を行います。
後鼻神経切断術と同様にこの部分は顔面骨の発育ともあまり関係しないので年齢的な制限は強くありません。
対象年齢は12~13歳からですが、1時間程度かかる手術ですので中学生くらいまでは全身麻酔で、高校生位からであれば局所麻酔の日帰りでも可能です。

内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型
(下鼻甲介手術)(片側)
7,940点
 約24,000円

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まとめ

以下に小児の鼻詰まりとなる病気、および手術を行う場合の対象年齢と麻酔方法をまとめました。

小児の鼻詰まりとなる病気 手術 対象年齢 麻酔方法
アデノイド増殖症 アデノイド増殖症切除術 3歳以降 全身麻酔
副鼻腔炎 内視鏡下鼻・副鼻腔手術 10歳以降 局所麻酔・全身麻酔
アレルギー性鼻炎 鼻粘膜(下甲介)焼灼術 10歳以降 局所麻酔
後鼻神経切断術 13歳以降 局所麻酔・全身麻酔
鼻中隔弯曲症 鼻中隔矯正術 15歳以降 局所麻酔・全身麻酔
肥厚性鼻炎・薬剤性鼻炎 内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型 13歳以降 局所麻酔・全身麻酔

監修医師

医院名 医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック
院長名 川村繁樹
資格 医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医
川村繁樹