鼓膜切開
鼓膜切開とは鼓膜表面を麻酔し、極小のメスで小さな穴をあけて液体を排出する方法で、難聴を改善させ中耳腔の換気を行う効果があります。
薬ではなかなか良くならない時や生活に支障をきたすほどの難聴がある場合には必要となります。
鼓膜の麻酔には綿球に麻酔液を浸して鼓膜表面に置く方法や外耳道に麻酔液を注入して微弱電流を流すイオン麻酔法があります。
これらの麻酔を行うと切開に伴う痛みほとんどありません。鼓膜切開による穴が後々まで残ることはまずなく、多くの場合は数日から1週間ほどで自然とふさがります。むしろ鼓膜が閉じた後に再び液体が貯まったときなどは何度か切開が必要になることもあります。
切開そのものは数回あるいは数十回行っても問題はないと言われていますが小さな子に何度も恐い思いをさせることはなるべく避けたいものです。
当院では極力保存的治療を優先していますが難治性の時には必要となることもご了解下さい。
チュービング
何度か切開を行っても滲出性中耳炎が反復するような場合には中耳の換気と貯留液の排泄を目的として 鼓膜にチューブを挿入します。
チューブの種類には数ヶ月の短期留置型と1〜2年の長期留置型がありますがいずれも穴の大きさは1mm程度で外径も数mmの小さな物です。
方法としては、まず前述の鼓膜切開を行ったあと中耳の滲出液を吸引し、このチューブを挿入します。鼓膜表面の麻酔をしますので痛みはほとんどありませんが顕微鏡を見ながら行う手技ですので動いたりするとできないこともあります。
成人や小学校高学年以上は外来で行います。小学校低学年までは全身麻酔で行うことも多くなりますが、その場合は関連病院を紹介いたします。
挿入したチューブは自然に抜ける場合もありますが抜去は外来で簡単に行えます。
アデノイド切除術
小児期には鼻の奥(上咽頭)に扁桃組織の一種であるアデノイドが存在し、病的に大きいと耳管咽頭口を圧迫して滲出性中耳炎の原因となり副鼻腔炎の治癒も遅らせます。
アデノイドは7歳前後で最も大きくなり、その後は縮小していきますが滲出性中耳炎に悪影響を及ぼしているときにはチュービングと合わせてアデノイド切除を行います。この時には全身麻酔で1泊入院が必要です。
よくある質問
切開やチュービングすると聞こえが悪くならないの?
切開やチューブによる鼓膜の穴はそれほど大きなものでなく聞こえに対する悪影響はあまりありません。
むしろ中耳に貯留液がある状態や中耳が陰圧になっている状態の方が鼓膜の動きが悪く難聴の程度も強い事が多いとされています。
切開やチュービングの後でお風呂や水泳はいいの?
お風呂やシャンプーで水がかかる程度はまず心配ありません。
ご心配であれば綿球で耳栓をして入浴すれば問題はないと言えます。水泳の時にも耳栓をすればほぼ大丈夫ですが深く潜ったりすると水圧で中耳に水が入ることもあり得ますので潜水は避けた方がよいでしょう。
水泳授業を禁止することはほとんどありません。
切開やチュービングなどの危険性は?
手術手技そのものは安全性が高く、危険性はあまりありません。
ただ、チュービングのあとでチューブに対する異物反応などにより耳漏が止まりにくくなることがまれにあり、この時には抜去が必要です。また、長期間の留置のあと数%に鼓穿孔が残ることがあります。
ほとんどは外来での閉鎖処置で閉じますが、まれには閉鎖手術が必用になることもあります。
治療費用
3割負担の場合 | |
鼓膜チューブ挿入術(片側) | 8,010円 |
- すべての手術に健康保険が適用されます。
- 片側とあるのは一側あたりの費用です。多くの場合は両側同時に行いますのでこの2倍の費用になります。
- 手術費用以外に術前の検査料、再診料、術後の薬剤料が加わります。
監修医師
医院名 | 医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック |
---|---|
院長名 | 川村繁樹 |
資格 | 医学博士 関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授 身体障害者福祉法第15条指定医 |